企画書やお知らせ、ブログ記事のタイトルなどを考えているとき、「なんとなくイメージはあるのに、しっくりくる言葉が出てこない」ということはないでしょうか。悪くはないけれど、もう少しだけ伝わる表現にしたい――そんなときに、生成AIは心強い相談相手になります。
AIは、単語の言い換えだけでなく、「誰に向けて」「どんな雰囲気で伝えたいか」というニュアンスを踏まえた表現案を、いくつも提案してくれます。その中から「自分たちらしい」ものを選び、少し手を入れて仕上げる、という使い方が現実的です。
この記事では、社内企画や勉強会のタイトル、Web記事の見出しやリード文、ビジョンやコンセプトの表現という3つのシーンを例に、言葉に迷ったときにAIへどう相談すればよいかを具体的なプロンプトとともに紹介します。
1. AIは“言い換え候補を出してくれる相棒”と考える
AIに表現を相談するときのポイントは、「正解を一つ決めてもらう」のではなく、「よさそうな候補をたくさん出してもらう」つもりで使うことです。候補の中から、自分たちの文脈に合うものを選び、組み合わせていくことで、最終的な表現が決まっていきます。
そのためには、次のような情報をセットで伝えるとよいでしょう。
・どんな内容の文章や企画か(内容)
・誰に向けているのか(対象)
・どんな雰囲気にしたいか(トーン)
・文字数や語感の制約(短く/かたい/やわらかい など)
たとえば、勉強会のタイトルに迷ったときには、次のような基本形のプロンプトが使えます。
例:「次の勉強会の内容をもとに、社内向けのタイトル案を10個提案してください。対象は若手社員で、雰囲気は少しカジュアルにしてください。」
このプロンプトでは、「内容」「対象」「雰囲気」を指定することで、AIに目指してほしい方向性を共有しています。あとは、出てきた案を見ながら、「これは少しかしこまりすぎている」「これは社風に近い」といった評価をしていくだけです。
2. 事例①:社内企画・勉強会のタイトル案を一緒に考える
最初の事例は、社内企画や勉強会のタイトルです。内容は良いのに、タイトルが堅すぎて参加したくならない、逆に砕けすぎて目的が伝わらない、といった悩みはよくあります。
たとえば、「生成AIの基本的な使い方を社内で共有する勉強会」を企画しているとします。この場合、次のような情報をまとめてAIに渡せます。
・テーマ:生成AIの基本的な使い方
・対象:日常的にPCを使っているが、AIはほとんど触ったことがない社員
・目的:とりあえず試してみるきっかけを作る
・雰囲気:少しカジュアルで、参加しやすい印象
これを踏まえたプロンプトの例が次です。
例:「次の条件をもとに、社内勉強会のタイトル案を10個提案してください。テーマは生成AIの基本的な使い方です。対象はAI初心者の社員で、参加しやすいカジュアルな雰囲気にしてください。タイトルは15字以内でお願いします。」
このプロンプトでは、テーマや対象者だけでなく、「文字数」や「カジュアル」といった制約も含めているため、実際の案内文に載せやすいタイトル候補をまとめて得ることができます。
もし気に入った案が複数あれば、「この3つを少しだけフォーマル寄りにしてください」と追加で依頼し、調整していくこともできます。
3. 事例②:Webページ・ブログ記事の見出しやリード文を磨く
次の事例は、Webページやブログ記事の見出し・リード文です。検索キーワードを盛り込もうとすると説明的な表現になりがちで、クリックしたくなるタイトルからは遠ざかってしまうことがあります。
AIを使うときは、まず記事の内容をざっくり要約してもらい、そのうえで見出し案やリード文を複数作ってもらう、という手順が使いやすいでしょう。
たとえば、「中小企業が生成AIを業務に取り入れた3つの事例」を紹介する記事を書いたとします。このとき、次のようなプロンプトが考えられます。
例:「次のブログ記事の内容を2〜3行で要約してください。その要約をもとに、中小企業の経営者が読みたくなる見出し案を5つ作成してください。検索キーワード『生成AI 業務効率化』を自然に含めてください。」
このプロンプトでは、記事の要約と見出し作成をセットで依頼しています。要約を挟むことで、AIが記事のポイントを理解したうえで見出し案を出してくれるため、内容とタイトルのズレを減らすことができます。
リード文(冒頭の導入文)についても、同じ要約を活用できます。
例:「上で作成した要約をもとに、ブログ記事の冒頭に置くリード文を200字程度で作成してください。読者は中小企業の経営者を想定し、『自分ごと』として読んでもらえるような書き出しにしてください。」
このプロンプトでは、「誰に読んでほしいか」と「どんな気持ちになってほしいか」を指定しているため、単なる説明ではなく、読み進めたくなる導入文を提案してもらいやすくなります。
4. 事例③:ビジョンやコンセプトの言い回しを整える
3つ目の事例は、ビジョンやサービスコンセプトの表現です。ここでは、一言一言に意味を込めたい一方で、どうしても抽象的で分かりにくい文章になりがちです。
AIに相談する際は、「守りたい意味」と「避けたい言葉」をはっきりさせたうえで、複数の言い換え案を出してもらうと、検討が進めやすくなります。
たとえば、「地域の小さな事業者の挑戦を支える」というビジョンを、社員向けに分かりやすく伝えたい場合、次のようなプロンプトが使えます。
例:「次のビジョン文を、意味は変えずに、社員向けにわかりやすく前向きな言葉に5通り書き換えてください。使ってほしくない言葉は【DX】【シナジー】です。ビジョン文:『地域の中小企業の挑戦をテクノロジーで支え、持続可能な成長をともにつくる』。」
このプロンプトでは、「変えてはいけない意味」と「避けたい言葉」を指定しているため、自社らしさを保ちながら、読み手に届きやすい表現案を複数得ることができます。
出てきた案の中から、「普段の社内の会話に近いもの」「採用サイト向けに使えそうなもの」といった観点で選び分けていくと、用途ごとにしっくりくる表現が見つかっていきます。
5. AIの案から“自分の言葉”を選び取る
AIが提案してくれる表現は、あくまで「たたき台」です。そのまま使うのではなく、「どの案のどこが良いのか」を一度言葉にしてみることで、自分たちが大事にしたいニュアンスが見えてきます。
たとえば、「この案の『〜〜』というフレーズは社風に合っているが、少し堅い」「この案の語尾は柔らかくてよいが、中身が薄い」といった感想を整理し、そのうえでAIに再度依頼します。
例:「先ほど提案してくれたタイトル案のうち、3番が一番イメージに近いです。この案をベースに、もう少しだけカジュアルなニュアンスで3案作り直してください。」
このプロンプトでは、気に入った案を指定し、「どこをどう変えたいか」を追加で伝えることで、AIは次第に自社の好みを学習し、よりフィット感のある表現案を提案してくれるようになります。
言葉に迷ったとき、頭の中で一人で考え続けるよりも、AIに候補を出してもらいながら選び取っていく方が、早く、広い選択肢に出会えます。大切なのは、「全部決めてもらう」のではなく、「いいところを少しずつ借りる」感覚で使うことです。
次に企画名やタイトル、見出しに悩んだときは、内容と対象者、雰囲気を簡単に文章にしてから、「この条件に合う案をいくつか提案してください」とAIに相談してみてください。その中から自分たちらしい表現を選び、少し手を加えていくことで、「ぴったりくる言葉」が少しずつ見つかっていきます。
