ノートやメモ帳に急いで書いた走り書き。会議中に書きつけたキーワードの羅列。あとで読み返そうと思っても、「自分にしか分からない暗号」になってしまうことはないでしょうか。内容は大事なのに、文章に起こすのが面倒で、そのまま机の引き出しに眠ってしまう……というのは、とてももったいない状態です。
生成AIとスマートフォンを組み合わせれば、「手書きメモを写真に撮って、テキスト化してもらい、要点に整理する」という流れを、数分で終わらせることができます。書いた本人でさえ忘れかけていたアイデアや決定事項を、読みやすい文章として残せるようになります。
この記事では、会議メモ・ヒアリングメモ・アイデアノートという3つのシーンを例に、手書きメモをAIに渡して読みやすくまとめてもらう具体的なステップとプロンプト例を紹介します。
1. 手書きメモをAIに渡すまでの準備を決めておく
最初に決めておきたいのは、「手書きメモをどうやってデジタル化するか」です。スマートフォンのカメラアプリやスキャナアプリで撮影し、文字認識機能(OCR)でテキスト化すれば、多くの場合は十分です。タブレット端末で手書きしたものなら、そのままテキスト書き出しできることもあります。
大切なのは、「完璧なテキスト化」を目指しすぎないことです。多少誤変換があっても、AIに渡す前提としては問題ありません。むしろ、気になる表現や抜けている情報を補いながら、「どのメモがどの話なのか」だけ分かるようにしておくことが大切です。
メモをテキスト化したら、そのままでは羅列された言葉の集まりになっているはずです。そこで、「このメモを、何のために、誰に向けてまとめたいのか」を一文にしてからAIに渡します。
たとえば、次のような言い方です。
例:「次のメモは、◯月◯日に行った打ち合わせの走り書きです。社内メンバーに共有するために、『背景』『現状の課題』『決定事項』『宿題』に分けて箇条書きで整理してください。」
このプロンプトで、手書きメモの内容が「会議の記録」であり、社内共有のために整理したいこと、どんな項目に分けたいかがAIに伝わります。雑多なメモが、そのまま簡易な議事録の骨組みに変わります。
2. 事例①:会議メモを要点が分かる議事録にする
最初の事例は、「ノートに書いた会議メモを、後から読んでも分かる議事録に変える」というシーンです。会議中にメモを取りながら、誰が何を言ったかまできっちり記録するのは大変です。しかし、AIにあとから整理してもらえば、要点と決定事項を抜き出すことができます。
たとえば、次のようなメモがあるとします。
・来期の売上目標 今期比120%?
・ネットショップの在庫切れ問題 お客様からクレーム数件
・在庫管理のシステム化 省力化投資補助金 使えるかも?
・まずはPOSレジの入れ替えを優先 見積もり依頼先◯社
このようなメモを、そのままAIに渡して整理してもらいます。
例:「次の会議メモを読みやすく整理してください。『背景』『現状の課題』『検討した案』『決定事項』『今後の宿題』の5つの項目に分けて箇条書きでまとめてください。」
このプロンプトを使うと、会議で話していた内容が、後から参加メンバー全員で共有しやすい形に整理されます。決定事項と宿題が明確になるため、次のアクションにつなげやすくなります。
さらに、社内チャットで共有するための短い要約も、追加でお願いできます。
例:「上で整理した内容を、社内チャットで共有するための要約にしてください。重要なポイントを3つに絞り、各ポイントを1行で説明してください。」
このプロンプトでは、忙しいメンバーが流し読みしても要点が分かるような要約を作ってもらえます。長い議事録を読む時間がない人にも、会議の方向性が伝わります。
3. 事例②:ヒアリングメモから提案書のたたき台を作る
次の事例は、顧客とのヒアリングや電話相談のメモを、提案書やメールのたたき台に変える場面です。質問と回答を書き散らしたメモから、相手の悩みや要望を整理し、提案の方向性をまとめるのは骨の折れる作業です。
ここでも、「誰とのヒアリングか」「何の提案を作りたいのか」を添えてAIに渡します。たとえば、新しい予約システムの導入について美容サロンの店長から話を聞いたメモなら、次のようなプロンプトが考えられます。
例:「次のメモは、美容サロンの店長に予約システムについてヒアリングした内容です。メモを整理して、『現状の予約方法』『困っていること』『導入したい機能』『予算のイメージ』の4項目に分けて箇条書きにしてください。」
このプロンプトを使うことで、断片的なヒアリングメモが、提案を作るための整理された情報に変わります。さらに、その整理結果を基に、提案書の構成案まで作ってもらうことも可能です。
例:「整理してくれた4項目をもとに、美容サロン向けの提案書の構成案を作成してください。A4で5ページ程度を想定し、各ページのタイトルと入れるべき内容を箇条書きにしてください。」
このプロンプトでは、提案書のページ構成まで具体的に示してもらえます。あとは、自社のサービス内容や価格を当てはめていくだけで、提案資料のたたき台が完成します。
4. 事例③:アイデアノートから「企画の種」を見つける
3つ目の事例は、日頃から書きためているアイデアノートを整理するシーンです。「こんなことをやってみたい」「将来のキャンペーン案」などがあちこちのページに散らばっていると、自分でも全体像がつかめなくなってしまいます。
月に1回などタイミングを決めて、アイデアノートのページをまとめて撮影し、テキスト化してからAIに渡してみましょう。そのうえで、「どんなテーマのアイデアが多いか」「すぐに試せそうなものはどれか」を整理してもらいます。
例:「次のメモは、ここ1か月で思いついた企画アイデアのメモです。内容を読みやすく整理し、似ているアイデアをグループ分けしてください。各グループにわかりやすい名前を付け、その中で『すぐに試せそうなアイデア』を1つずつ選んでコメントしてください。」
このプロンプトでは、バラバラのアイデアを分類し、「今すぐ」「中期」「長期」などの時間軸で考えるヒントまで得ることができます。アイデアを単なるメモで終わらせず、実際の行動に結びつけやすくなります。
5. 手書きメモをAIに渡すときのコツと注意点
手書きメモをAIに渡すときのコツは、「メモそのものをきれいにする」のではなく、「AIに何をしてほしいか」をはっきりさせることです。メモは多少荒くてもかまいません。その代わりに、用途や読み手、分けてほしい項目を丁寧に指定します。
また、顧客名や電話番号などの個人情報が含まれる場合は、撮影の前に黒く塗りつぶしたり、テキスト化した後にイニシャルに置き換えたりするなど、最低限の配慮をしてからAIに渡すと安心です。
毎回ゼロからプロンプトを考えるのが大変であれば、「会議メモ用」「ヒアリングメモ用」など、よく使う型を数パターン用意しておき、「メモ+用途+テンプレプロンプト」をセットで投げる形にしておくと、日常の運用が楽になります。
手書きメモは、その場の熱量や雰囲気が残る大切な記録です。しかし、読み返しにくいまま放置してしまうと、せっかくの情報が活かされません。生成AIを使って、「写真に撮る」「テキスト化する」「用途に合わせて整理してもらう」という流れを作っておけば、メモはいつでも取り出せる“使える記録”に変わります。
次にノートやメモ帳に書き込みをしたときは、そのページをスマートフォンで撮影し、簡単にテキスト化したうえで、「このメモを◯◯のために整理してください」とAIにお願いしてみてください。走り書きが、思いのほか読みやすい文章に変わる体験は、メモを取るモチベーションにもつながっていきます。
