【活用編①】「調べる」より「相談する」Geminiの使い方入門

【活用編①】「調べる」より「相談する」Geminiの使い方入門

インターネットで何かを調べようとすると、検索結果がずらっと並び、気づけばタブが10個以上開いている。どの情報が大事なのか分からず、読み比べているうちに時間だけが過ぎてしまう――そんな経験は、多くの方に覚えがあるのではないでしょうか。

Google Gemini は、「情報を探す」のではなく「相談してまとめてもらう」ことに向いたツールです。キーワードだけを入れるのではなく、自分の立場や前提条件、知りたいことのゴールまでを一緒に伝えることで、検索だけではたどり着きにくい整理された答えが返ってきます。

この記事では、中小企業の経営者や担当者がよく直面する3つのシーンを取り上げながら、「調べる」前に「Geminiに相談する」ための具体的なプロンプト例と使い方を紹介します。

1. Geminiには「背景・前提・ゴール」をまとめて相談する

従来の検索は、「省力化投資補助金 条件」などキーワードを打ち込み、表示されたページを一つずつ開いて確認するやり方が中心でした。これに対してGeminiは、「自社の状況」と「知りたい内容」をセットにして伝えるほど、整理された回答を返してくれます。

はじめの一歩として意識したいのは、「誰として」「何を」「どこまで知りたいか」を一文でまとめてから相談することです。たとえば、次のような聞き方ができます。

例:「従業員5名の小売業の経営者として、省力化投資補助金について大まかな内容と、自社に関係がありそうかどうかを3つのポイントに分けて教えてください。」

このプロンプトでは、自社の規模と業種、知りたいテーマ、そして「関係がありそうかどうか」というゴールを同時に伝えることで、単なる制度概要ではなく、自社への当てはまり方まで含めた整理された説明を得ることができます。

以降の事例でも、必ず「背景・前提・ゴール」をセットで伝えることを意識しながら、具体的な相談の仕方を見ていきます。

2. 事例①:補助金・助成金をざっくり把握したいとき

最初の事例は、「補助金・助成金について、どれが自社に関係しそうかをざっくり知りたい」というシーンです。制度名を一つずつ検索し、募集要項を読み込むのは大変ですが、Geminiに相談すれば、候補を絞り込んだうえで比較まで手伝ってもらえます。

たとえば、次のような状況を想像してみます。

・従業員5名の小売業
・店舗の省力化のためにPOSレジや在庫管理システムの導入を検討している
・国の補助金と、できれば自治体の制度も知りたい

この前提をまとめてGeminiに渡し、「候補の整理」と「大まかな比較」を相談します。

例:「従業員5名の小売業として、POSレジや在庫管理システムの導入を検討しています。国と自治体の補助金で、利用を検討できそうな制度を3つ挙げてください。それぞれについて、対象経費・補助率・申請のタイミングを表形式で教えてください。」

このプロンプトでは、候補となる制度をいくつか挙げるだけでなく、比較しやすい観点(対象経費・補助率・タイミング)を指定することで、「候補一覧+簡易比較表」という形のアウトプットを得られます。

さらに、気になった制度について、ポイントを絞って深掘りしてもらうこともできます。

例:「上で教えてくれた制度のうち、『省力化投資補助金』について、中小企業が利用する際のメリットと注意点を、それぞれ3つずつ箇条書きにしてください。」

このプロンプトでは、一つの制度に焦点を当て、「メリット」と「注意点」という視点で整理してもらうことで、制度を採用するかどうか判断するための材料を短時間で得ることができます。

3. 事例②:新規事業の業界・競合リサーチをしたいとき

次の事例は、「新しいサービスの構想はあるが、業界全体の構造や競合の傾向がよく分からない」という場面です。ここでも、Geminiに「サービス案」と「知りたい範囲」を伝えることで、調査の入り口を作ることができます。

たとえば、地域のカフェが「オンラインでコーヒーの定期便サービスを始めたい」と考えているケースを想像します。自分たちのアイデアと似たサービスがどの程度あるのか、どんな差別化の方向性があり得るのかを知りたい場合です。

この場合、まず自分たちの構想を簡単に文章にしてから、Geminiに相談します。

例:「次のサービス案について、国内外で似たようなサービスを提供している事業者を5社程度挙げてください。サービスの特徴と料金の目安も簡単に教えてください。サービス案:『スペシャルティコーヒー豆のサブスクリプション。月1回、焙煎したての豆を自宅に届ける。焙煎度合いや風味の好みをオンラインで登録できる』。」

このプロンプトでは、自社の構想をできるだけ具体的に伝えることで、Geminiに「何と何が似ているのか」を判断してもらいやすくしています。返ってきた候補を眺めるだけでも、業界のざっくりした地図が描けるはずです。

さらに、自社の立ち位置を整理するときにも、Geminiは役立ちます。

例:「上で挙げてくれた類似サービスと比べて、地方の小規模ロースターが取れそうなポジション案を3つ提案してください。それぞれの案について、『どんなお客様に向いているか』『強みと弱み』を1行ずつ説明してください。」

このプロンプトでは、単に「差別化ポイント」を挙げるのではなく、「どんなお客様向けか」「強み・弱みは何か」をセットで整理してもらうことで、新規事業の方向性を議論するときのたたき台を手早く得ることができます。

4. 事例③:社内メモと外部情報を組み合わせて整理したいとき

3つ目の事例は、「社内に過去のメモや報告書はあるが、外部の動きも踏まえて整理し直したい」というシーンです。たとえば、これまでの会議メモや売上分析を踏まえつつ、「今後の方向性」をまとめ直したいときに、Geminiへの相談が役立ちます。

まず、社内メモの要点を自分なりに箇条書きにし、そのうえで外部環境も加味した整理を依頼します。

例:「次の社内メモの要点を3つに整理したうえで、最近の業界動向も踏まえて、今後検討すべき論点を3つ提案してください。社内メモ:『…(箇条書き)…』。」

このプロンプトでは、「社内の情報」と「世の中の動き」の両方を見ながら、次に考えるべき論点を整理してもらうことができます。経営会議や戦略ミーティングの前に、一度視点を整えておくのに有効です。

整理した論点を、そのまま会議用のスライドに落とし込むこともできます。

例:「上で提案してくれた3つの論点を、経営会議用のスライド1枚分のメモにしてください。スライドタイトル案と、小見出し、各論点の説明文(1行)を含めて箇条書きでまとめてください。」

このプロンプトでは、「会議用のスライド」という用途を明示することで、Geminiに「どの程度の情報量で、どんな書き方をすべきか」を判断してもらいやすくしています。

Geminiを「検索の代わり」に使うのではなく、「相談相手」として使うことで、情報収集から論点整理までの時間を大きく短縮できます。ポイントは、単語ではなく「背景・前提・ゴール」を文章で伝えることです。

次に何かを調べるときには、ブラウザで検索する前に、まずGeminiに状況と目的をまとめて相談してみてください。「候補を挙げてもらう → 気になる点を深掘りする → 自社向けに整理してもらう」という流れを一度体験すると、「調べる前に相談する」スタイルの便利さを実感できるはずです。

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