会議が終わったあと、「録音はあるけれど、議事録に起こす時間がない」と困ったことはないでしょうか。メモを取りながら進行すると議論に集中できず、録音を聞き返すと今度は時間が溶けていきます。
生成AIを使うと、この「会議後の重たい作業」をかなり軽くできます。ポイントは、完璧な文字起こしを目指すのではなく、「何が決まり、誰が何をするか」を素早く整理することに絞ることです。
ここでは、小売店の週次ミーティングを例に、メモや文字起こしから“動く議事録”を作るまでのプロセスとプロンプト例を紹介します。
1. ラフなメモや文字起こしをそのまま渡す
まずは、会議中に取った箇条書きメモや、録音から起こしたテキストをそのままAIに渡します。多少の聞き間違いや言いよどみが含まれていても構いません。
たとえば、次のようなメモが残っているとします。
・4月の売上は前年比+8%、ただし平日昼の来店が減少
・母の日ギフトセットの企画案(A案:焼き菓子セット、B案:ドリップバッグ)
・在庫過多の商品Cの値下げ検討
・Instagramでの告知強化、投稿頻度を週3回に
・次回までに売場レイアウト案を2パターン用意
このメモを貼り付けて、次のように依頼します。
例:
「次の会議メモを整理してください。
・『議題』『話し合われた内容の要点』『決定事項』『次にやること』の4つに分類
・箇条書きで簡潔にまとめる
・あいさつや雑談は省略する
ように議事録のたたき台を作成してください。」
ここで重要なのは、「分類の軸」を先に指定しておくことです。分類基準さえ決まれば、AIは長文の中から必要な要素をかなり上手に拾い出してくれます。
2. 「次にやること」をタスクとして整理する
会議の価値は、「何を決めたか」だけでなく、「誰がいつまでに何をするか」が明確になることにあります。そこで、「次にやること」をタスク化し、担当者と期限をセットで整理してもらいます。
先ほど分類した「次にやること」の一覧をもとに、次のように依頼します。
例:
「この『次にやること』の一覧を、実行タスクとして整理してください。
・タスク内容
・担当者(不明な場合は『未設定』と記載)
・期限(明示されていない場合は『次回会議まで』と記載)
・ステータス(未着手/進行中/完了)
の4項目を持つ表にしてください。」
この表をそのままスプレッドシートやタスク管理ツールに貼り付ければ、簡単な進捗管理表としてすぐに使えます。会議のたびに同じ形式でタスクを整理することで、「言いっぱなしで終わる議論」を減らせます。
3. 共有先ごとに議事録の“見た目”を変える
同じ会議でも、「社内メンバー向けにざっくり共有したいとき」と、「上司や取引先に正式な報告を出したいとき」では、求められる文章の形が違います。生成AIは、この「見た目の変換」にも力を発揮します。
まず、社内向けのカジュアルな共有文に変換してもらう例です。
例:
「この議事録の内容を、社内メンバー向けのチャットで共有する文章に変換してください。
・冒頭に一行で会議の目的を書く
・その後に『決まったこと』『各自の宿題』を見出し付きの箇条書きで整理
・全体で500字以内
になるように整えてください。」
次に、同じ内容を上司への報告メールに変換してもらう例です。
例:
「この議事録の内容を、上司宛ての報告メール文に書き換えてください。
・件名も3案提案する
・本文は『目的』『議論の要点』『決定事項』『課題・検討事項』の順に構成
・ビジネスメールとして自然な敬語に整える
ようにしてください。」
一度この型を作っておけば、次回からは議事録を貼り付けて「いつもの形式に整えてください」と指示するだけで済むようになります。
4. 録音データからの議事録作成をルール化する
最近は、オンライン会議ツールの自動文字起こし機能や、スマホアプリを使った録音からテキスト化するサービスも増えています。生成AIは、その文字起こし結果を読みやすく整え、要点を抜き出すところが得意です。
たとえば、30分の会議の文字起こしが1万字になってしまった場合でも、次のように依頼すればコンパクトなまとめが手に入ります。
例:
「次の会議の文字起こしを読みやすく整えてください。
・発言者の名前は残す
・あいづちや言いよどみは削除
・重複する内容はまとめる
・全体を3分の1程度の長さに短縮
したうえで、その後に『決まったこと』『宿題』『今後の検討事項』の一覧を追加してください。」
このようなルールをあらかじめ決めておくと、「会議を録音→文字起こし→AIで整形→共有」という一連の流れを、ほぼ同じ手順で繰り返せるようになります。
まとめ
議事録づくりは、「完璧に記録すること」ではなく、「あとから見返したときに行動につながること」が本来の目的です。生成AIは、この目的に沿った形で情報を整理するのが得意です。
次の会議では、数行のメモか、録音から起こしたテキストを用意して、「議題・決定事項・次の行動に整理してください」とAIに依頼してみてください。議事録作成の負担が軽くなるだけでなく、「会議で決まったこと」が確実に前に進む感覚を得られるはずです。
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