「メールを書くたびに時間がかかる」「送ったあとに、きつく聞こえたかもと不安になる」――そんなモヤモヤは、多くの人が抱えています。特に、小さな会社やお店では、代表者が問い合わせ対応から営業メールまで一人で担っていることも珍しくありません。
ここで生成AIを「文章の相棒」にすると、下書き作成・トーン調整・最終チェックを一気に任せられます。あなたは要点だけを渡し、AIに丁寧な文章へと整えてもらうイメージです。
この回では、ネットショップ店主の事例を交えながら、ChatGPTなどの生成AIでメール文を整える具体的なステップとプロンプト例を紹介します。
1. まず「目的」と「相手」を一行で伝える
AIにメール文を作ってもらうとき、いきなり「丁寧なメールにしてください」とだけ伝えると、こちらの意図と少しズレた文章が返ってくることがあります。最初に、次の3つを一行ずつ書き出してからAIに渡すと、精度がぐっと上がります。
・誰に(例:ネットショップのお客様/取引先の担当者)
・何の用件で(例:在庫切れのお詫び/お打ち合わせ日程のご相談)
・どんな印象で伝えたいか(例:誠実・前向き・ていねい・カジュアル)
たとえば、ネットショップで在庫切れになってしまった商品について、お客様にお詫びメールを送りたいとします。メモ書きレベルで構わないので、要点を箇条書きにしてAIに渡します。
例:
「次の情報をもとに、お客様への在庫切れのお詫びメール文を作成してください。
・個人のお客様宛
・商品Aが在庫切れになり、次回入荷は3週間後
・代替商品の提案をしたい(商品B)
・今回に限り5%OFFクーポンを添付
・誠実で、かしこまりすぎないトーンでお願いします。」
このように「相手・用件・トーン」をセットで伝えると、こちらの意図に近いメール文が出てきます。最初は多少修正が必要でも、数回やり取りするうちに「いつもの感じ」がAIとの間で共有されていきます。
2. 箇条書きのメモから本文を起こしてもらう
実務では、ゼロから文章を考えるよりも、「頭の中の要点を箇条書きにする」ほうが速いことが多いものです。そこで、まず自分で1〜2分だけメモを書き、そのメモをAIに渡して本文にしてもらいます。
先ほどの在庫切れのケースなら、次のようなラフなメモでも十分です。
・注文ありがとう
・商品Aが在庫切れで発送できない
・3週間後に再入荷予定
・すぐ欲しい人には商品Bを提案したい
・お詫びとしてクーポンを付けたい
これをそのまま貼り付けて、次のように依頼します。
例:
「次の箇条書きをもとに、お客様へのメール文を作ってください。
・ビジネスメールとして失礼のない敬語に整える
・200〜300字程度
・件名の候補を3つ提案する
ようにしてください。」
AIが提案した文章を読みながら、「この表現は少しかしこまりすぎている」「ここはもっと率直に伝えたい」と思ったところを、そのままフィードバックします。AIは、フィードバックを受けて言い回しを何度でも調整してくれます。
3. トーンの微調整はAIに何度も頼んでよい
メールの難しさは「言い過ぎても、言わなさ過ぎてもよくない」点にあります。そこで、同じ内容のメールを、相手や場面に合わせてトーンだけ変えてもらう使い方が役立ちます。
たとえば、先ほど作ったお詫びメールを、リピーターのお客様向けに少しフランクにしたいときは、次のように指示します。
例:
「このメール文を、以前から何度かご利用いただいているリピーターのお客様向けに書き換えてください。
・基本は敬語を維持
・ところどころに親しみのある表現を入れる
・文章量はあまり増やさない
ように調整してください。」
逆に、取引先の担当者に依頼やお詫びをする場合は、もう少し固めのトーンにしてもらいます。
例:
「このメール文を、取引先企業の担当者向けのビジネスメールとして整えてください。
・社外向けの丁寧な言葉づかい
・主語と結論をはっきりさせる
・依頼内容が一読でわかるようにする
を意識して書き直してください。」
一度しっくりくる文章ができたら、「このトーンを今後のメール作成でも使ってください」とAIに伝えておくと、次回以降も近い雰囲気の文を提案してくれるようになります。
4. 送る前の最終チェックもAIに任せる
メールを送信する前の「最終チェック」こそ、AIに頼みやすい作業です。誤字脱字・日時の間違い・表現のきつさなど、人が見落としやすい部分を、第三者目線で確認してもらえます。
完成したメール文を貼り付けて、次のように依頼します。
例:
「次のメール文をチェックしてください。
・誤字脱字があれば修正案を示す
・日付・金額・数量の表記に不自然な点があれば指摘する
・相手に失礼と受け取られそうな表現があれば、より穏やかな言い回しを提案する
という観点でレビューし、修正案を提示してください。」
また、添付ファイルの有無など、うっかりミスを減らすチェックもある程度まで任せられます。
例:
「このメール文の中で、添付ファイルに言及している箇所を探してください。
・どのファイルを添付すべきか一文で整理する
・ファイル名の書き方の例を3つ提案する
ように回答してください。」
定期的に送る案内メールやお礼メールであれば、最終的に出来上がった文章を「テンプレートにしてください」と依頼し、差し替え部分を【 】で囲っておくと、次回以降の作業が一気に楽になります。
メール作成のすべてをAIに任せる必要はありません。大切なのは、「要点の整理」と「最終判断」を人が行い、その間の文章づくりをAIに手伝ってもらうことです。
今日これから送る1通だけで構いません。箇条書きのメモを用意し、「お客様へのお詫びメールとして整えてください」とAIに投げてみてください。ほんの数回のやり取りでも、「一人で悩み続けるメール作成」から抜け出せる感覚がつかめるはずです。
