【基礎編⑨】GeminiのCanvasで資料を仕上げる

【基礎編⑨】GeminiのCanvasで資料を仕上げる

資料づくりの本当の山場は「ほぼ書けたけれど、まだ出すには不安」というタイミングです。章ごとのバランス、図の説明、数字や用語のゆらぎ――細かい直しが積み重なり、最後の1〜2割に思った以上の時間がかかります。

Google Gemini の Canvas は、その「最後の1〜2割」をAIと一緒に詰めていくのに向いています。画面上で文章とコメントを並べて表示できるので、「どこをどう直したか」が一目でわかります。

ここでは、小さな会社が補助金の事業計画書や社内向けの提案書を仕上げる場面を例に、Canvasを使った3つの活用ステップと具体的なプロンプトを紹介します。

1. 章ごとに課題を伝えて部分的に整える

まずは資料全体を一度に直そうとせず、「第2章だけ」「まとめの部分だけ」と章を区切って整えていきます。Canvas上で直したい章を選択し、「どこが気になっているか」を一文で添えてAIに渡します。

たとえば、省力化投資補助金の事業計画書で「現状と課題」を説明する第2章が、長くて読みにくくなっているとします。この章だけを選択して、次のように依頼します。

例:「選択した第2章を読みやすくしてください。内容は変えずに、冗長な表現を減らして400字程度短くしてください。重複している説明は1か所にまとめ、見出し構成は維持してください。」

さらに、審査員の視点を意識した直し方をお願いすることもできます。

例:「同じ第2章を、補助金の審査員が読むことを想定して書き換えてください。課題が『誰にとって・どのように困っているか』が一読で伝わるように、主語と結論をはっきりさせてください。」

このように章単位でAIに提案してもらい、「採用する修正」「元のまま残す」をCanvas上で見比べながら決めていくと、全体の骨格を崩さずに読みやすさだけを高めていけます。

2. 図や表の“意図”を3行の文章にしてもらう

資料にグラフや表を入れても、意図がうまく書き添えられていないと、読み手には伝わりにくくなります。Canvasでは、図の近くのテキストを選び、図の意味を短くまとめてもらう、という使い方が便利です。

たとえば、「既存業務の流れ」と「AI導入後の流れ」を並べたフロー図を作ったとします。図そのものはPowerPointで作るとして、説明文はAIに任せるイメージです。

例:「この業務フロー図の意図を、資料の読み手に向けて3行で説明してください。『現状のムダ』『AI導入後に改善されるポイント』『期待される効果』がそれぞれ1行ずつ伝わるようにまとめてください。」

売上推移グラフなど、数字の変化を示す図なら、キャプションだけ任せることもできます。

例:「この売上推移グラフに付けるキャプションを20字以内で3案作成してください。読み手が『なぜこの図を見ているのか』を直感的に理解できる表現にしてください。」

こうして図ごとに「3行の説明+短いキャプション」を用意しておくと、資料全体の説得力が高まるだけでなく、後日同じ図を別の資料で再利用するときにも役立ちます。

3. 表記ゆれとトーンを一括でそろえる

最後の仕上げとして、資料全体の表記ゆれとトーンをそろえます。数字の全角・半角、日付の書き方、「顧客」と「お客様」などの用語のブレは、読み手の小さなストレスになります。

Canvas上で本文全体を選択し、ルールをまとめて指定すると、AIが一括で整えてくれます。

例:「この資料全体を校正してください。数字は半角、日付は『YYYY年M月D日』形式に統一してください。また、『顧客』『お客様』の表記を『お客様』に統一し、文末表現は『です・ます調』でそろえてください。」

社内共有用と、外部に提出する用でトーンを切り替えたいときも、Canvasでコピーを作り、片方だけ調整することができます。

例:「この資料を、社外の金融機関に提出することを想定して書き換えてください。専門用語の意味が一文でわかるように補足し、全体をややフォーマルなトーンに整えてください。」

逆に、社内メンバーにだけ共有するサマリー版を作りたい場合は、ポイントを5つに絞った要約をお願いすると、読み手の負担を減らせます。

例:「この資料の内容を、社内チャットで共有するための要約にしてください。重要なポイントを5つに絞り、各ポイントを1行で説明してください。」

表記ルールとトーンをAIに任せることで、人は「中身の妥当性」や「数字の根拠」の確認に集中できます。仕上げのストレスが減り、「これなら提出できる」と思えるラインに早く到達しやすくなります。

GeminiのCanvasは、「書き上げる」よりも「仕上げる」工程で威力を発揮します。章ごとの読みやすさの調整、図の意図の言語化、表記ルールの統一――これらをAIに分担してもらうことで、資料づくりの最後の山がぐっと低くなります。

まずは、最近作った資料の気になる1章だけをCanvasに貼り付けて、「ここを短く、読みやすくしてください」と頼んでみてください。小さな一歩から、「AIに任せられる部分」と「自分で判断すべき部分」の境界線が少しずつ見えてきます。

前の記事記事一覧に戻る次の記事