自分で書いた文章を読み返してみると、「内容は間違っていないのに、なぜか読みにくい」「途中で何を言いたかったのか分からなくなる」と感じることがあります。長い一文が続いていたり、話の順番が前後していたりすると、読み手はあっという間に迷子になってしまいます。
生成AIは、こうした「読みにくさ」を見つけて、流れをなめらかに整えるのが得意です。文章の内容そのものは変えずに、段落の順番を入れ替えたり、つなぎの一文を加えたり、長すぎる一文を分割したりといった“整え作業”を任せることで、読みやすさは大きく変わります。
この記事では、長文メール、報告書・提案書、ブログ記事という3つの場面を例に、AIに「文章の流れを整えてもらう」ための具体的なプロンプトを紹介します。
1. 読みにくくなるパターンをAIに指摘してもらう
まずは、「どこが読みにくいのか」をAIに教えてもらうところから始めるのがおすすめです。自分では気づきにくいクセも、第三者の目線で指摘してもらうと改善しやすくなります。
たとえば、次のようにお願いしてみます。
例:「次の文章を読みやすさの観点からチェックしてください。『一文が長すぎる箇所』『話の順番が前後している箇所』『同じことを繰り返している箇所』があれば、どの部分かを具体的に指摘してください。」
このプロンプトでは、AIに「どんなポイントでチェックしてほしいか」を事前に伝えています。指摘してもらった箇所を見れば、自分の文章のクセが見えてきます。
問題点が見えたら、次は実際にリライトを手伝ってもらいます。
2. 事例①:長文メールの流れを整える
最初の事例は、取引先や社内の関係者に送る長めのメールです。背景説明や経緯を書き足していくうちに、本題が分かりにくくなってしまうことはよくあります。
まず、自分で書いたメールの下書きをそのままAIに渡し、読み手の立場で整理してもらいます。
例:「次のメール文を、ビジネスメールとして読みやすくなるように整えてください。最初に『結論』、次に『背景』『詳細』『お願い事項』の順に並べ替え、必要であれば見出しや箇条書きも使ってください。内容は変えず、順番と文章のつながりだけを調整してください。」
このプロンプトでは、「結論→背景→詳細→お願い」という流れを指定しているため、読み手が「結局何の話なのか」をすぐに理解できる構成にしてもらえます。
さらに、メール全体を短くしたい場合には、ボリュームの指定も加えます。
例:「同じメール文を、要点が伝わる範囲で全体を3分の2程度の長さに縮めてください。削った箇所があれば、どんな内容を減らしたかも一文で説明してください。」
このプロンプトでは、「どの部分をどのような意図で削ったのか」まで教えてもらえるため、自分の説明のくどさを客観的に振り返る材料にもなります。
3. 事例②:報告書・提案書の章立てとつながりを整える
次の事例は、報告書や提案書など、複数ページにわたる文書です。内容を追加していくうちに、章の順番や見出しと中身の関係がちぐはぐになってしまうことがあります。
AIには、まず現在の構成を一覧にしてもらい、そのうえで「より自然な流れ」を提案してもらう、という段階的な使い方が効果的です。
例:「次の報告書案について、見出しとその下の内容を読み取り、『現状の章立て一覧』を作ってください。そのうえで、読み手にとって分かりやすい順番に並べ替えた『おすすめの章立て案』も提案してください。」
このプロンプトでは、「今どうなっているか」と「どう変えたほうがよいか」をセットで出してもらえるため、構成の書き換え方がイメージしやすくなります。
構成が固まったら、章と章のつなぎも整えてもらいます。
例:「おすすめの章立て案に沿って、各章の冒頭に1〜2行の導入文を追加してください。前の章で何を説明し、この章で何を説明するのかが自然につながるようにしてください。」
このプロンプトでは、「つなぎの一文」をAIに任せることで、全体として流れの良い報告書・提案書に近づけることができます。
4. 事例③:ブログ記事の“読みやすさチェック”を任せる
3つ目の事例は、ブログ記事やオウンドメディアの記事です。専門的な内容を丁寧に説明しようとするあまり、情報量が多くなりすぎてしまうことがあります。
ここでも、「どの読者に向けた記事か」を指定したうえで、読みやすさの観点からチェックしてもらうと効果的です。
例:「次のブログ記事案を、中小企業の経営者が読むことを想定してチェックしてください。『途中で読み手が迷子になりそうな箇所』『前提の説明が足りない箇所』『詳しすぎて主旨がぼやけている箇所』があれば、それぞれどこかを示したうえで、読みやすくするための具体的な提案を書いてください。」
このプロンプトでは、「どんな読み手か」「何を指摘してほしいか」を明確にしているため、単なる言い換えではなく、構成レベルでの改善提案が返ってきます。
必要に応じて、実際のリライトも依頼します。
例:「上で指摘してくれた箇所のうち、特に重要な部分だけを中心に、全体を30%程度短くした別バージョンの記事案を作成してください。見出し構成はできるだけ変えず、説明を簡潔にしてください。」
このプロンプトでは、「どの程度短くするか」「何を優先的に残すか」を指定することで、オリジナルの記事の意図を保ちながら読みやすさを高めてもらえます。
5. AIに文章を整えてもらうときのコツ
AIに文章の流れを整えてもらうときは、「内容まで勝手に変えてしまっていないか」を確認することが大切です。特に数字や固有名詞、結論のニュアンスなどは、自分の目で必ずチェックしましょう。
そのうえで、次のような使い方を意識すると、日常業務に取り入れやすくなります。
・まずは自分で最後まで書いてから、AIに「読みやすさチェック」と「リライト」を依頼する
・重要なメールや資料だけ、AIに整えてもらう対象にする
・うまくいったプロンプトをテンプレートとして残し、次回からコピペで使う
AIは「代わりに考えてくれる人」ではなく、「すでにある内容を整理してくれる人」として使うと、現実の業務にフィットしやすくなります。
文章の中身を大きく変えなくても、「順番」「段落の分け方」「つなぎの一文」を整えるだけで、読みやすさは驚くほど変わります。生成AIは、この“整える作業”を短時間で手伝ってくれる心強い存在です。
次に長めのメールや資料を書いたときは、そのまま送る前に一度AIに渡し、「読みやすくなるように流れを整えてください」と相談してみてください。少しの工夫で、読み手にとっても、自分にとっても負担の少ないコミュニケーションに近づけていけます。
