【活用編⑥】説明が苦手でも大丈夫 ― AIが話を整理してくれる

【活用編⑥】説明が苦手でも大丈夫 ― AIが話を整理してくれる

「説明が苦手で、話が長くなってしまう」「伝えたいことはあるのに、どこから話せばいいか分からない」。そんな悩みを抱えている方は少なくありません。頭の中では分かっているのに、言葉にしようとすると道に迷ってしまう。結果として、相手にうまく伝わらず、何度も同じ説明をすることになってしまいます。

生成AIは、そんな「まとまらない話」を整理してくれる頼れる相棒です。思いつくままに話した内容や、箇条書きのメモをそのまま渡し、「要点を3つにまとめてください」「初心者向けに言い換えてください」とお願いすれば、すっきりした説明文に整えてくれます。

この記事では、社内向けの新ルール説明、顧客へのサービス説明、複雑なアイデアの共有という3つの場面を例に、「説明が苦手でもAIに整理してもらえば大丈夫」という使い方と具体的なプロンプトを紹介します。

1. 「とりあえず全部出す」→「AIに整理してもらう」流れを作る

説明が苦手な人ほど、最初から短く分かりやすく話そうとして、余計に話せなくなることがあります。そこで発想を変えて、「まずは頭の中にあることを全部出す」「あとからAIに整理してもらう」という2段階に分けてしまいましょう。

方法はシンプルです。スマートフォンの録音アプリに向かって、相手に話すつもりで説明してみます。多少まとまっていなくてもかまいません。その音声を文字起こしし(AIの自動文字起こし機能を使っても構いません)、できあがった長い文章を、今度は別のAIに渡して整理してもらいます。

このとき、ただ「要約してください」と頼むよりも、「誰に向けて」「何のために」説明したいのかを添えて聞くと、ぐっと分かりやすいアウトプットになります。

例:「次の長い説明文は、社内メンバーに向けて新しい勤怠ルールを説明しようとして話した内容です。内容を整理して、『変更の背景』『ルールのポイント』『社員へのお願い』の3つの項目に分けて、箇条書きでまとめてください。」

このプロンプトでは、説明の相手と目的、分けてほしい項目を指定しています。AIは、長くて読みにくい文字起こしを、読み手目線で理解しやすい構成に整理してくれます。

2. 事例①:社内向けの新ルール説明を分かりやすくする

最初の事例は、社内向けの新ルールやシステム変更の説明です。変更の背景やメリット、具体的な操作方法など、伝えたいことが多すぎて、説明文が冗長になりがちです。

まずは、自分の言葉で「なぜ変えるのか」「何が変わるのか」「社員にどうしてほしいのか」を録音やメモで出し切り、そのあとでAIに整理を依頼します。

例:「次の文章は、新しい勤怠システムの導入について説明しようとして書いたメモです。社員向けのお知らせ文として、400字程度にまとめてください。『なぜ変えるのか』『社員にとってのメリット』『いつからどう変わるのか』が一読で分かるようにしてください。」

このプロンプトでは、文字数と強調したいポイントを指定しています。AIは、「背景→メリット→具体的な変更内容」という流れで、社員が読みやすいお知らせ文を提案してくれます。

さらに、社内チャット用に短くしたバージョンや、上長向けのもう少し詳しいバージョンも、同じ元メモから派生させることができます。

例:「同じ内容を、社内チャットで共有するための100字程度のお知らせ文にしてください。要点だけを短くまとめてください。」

このプロンプトを使えば、長い説明文を読まなくても概要だけを把握したい人向けの短い案内を簡単に作ることができます。

3. 事例②:顧客へのサービス説明を3段階に整理する

次の事例は、顧客に自社のサービスや商品を説明する場面です。機能や特徴をすべて伝えようとすると細かい話に埋もれてしまい、「結局何ができるのか」が伝わらなくなってしまいます。

ここでは、AIに「3段階の説明」を作ってもらう方法が有効です。具体的には、「一言で言うと」「3つのポイントで言うと」「詳しく説明すると」の3つです。同じ元メモから、この3種類の説明をセットで作ってもらいます。

例:「次のサービス説明メモをもとに、顧客向けの説明文を3パターン作成してください。1つ目は『一言で言うと◯◯です』と30字程度で説明する文、2つ目は『3つのポイント』に分けた説明文、3つ目は詳細な説明文(400字程度)にしてください。」

このプロンプトにより、状況に応じて使い分けられる説明セットを得ることができます。名刺交換の場では「一言説明」、Webサイトでは「3つのポイント+詳細」、提案書では「詳細説明」といったように、場面ごとに必要な長さの説明がすぐに取り出せます。

さらに、相手の知識レベルに合わせて難易度を調整することも可能です。

例:「上で作成した3つの説明を、ITに詳しくない中小企業の経営者にも伝わるように書き換えてください。専門用語を避け、日常の業務にひきつけた表現にしてください。」

このプロンプトでは、「誰に向けて説明するか」を指定することで、同じ内容でもグッと分かりやすい表現に変えてもらえます。

4. 事例③:複雑なアイデアやプロジェクトを整理して共有する

3つ目の事例は、新しいプロジェクトやアイデアをチームに共有する場面です。自分の頭の中ではつながっている話も、いざ説明しようとするとどこから話すか迷い、「前提の説明」だけで時間を使ってしまうことがあります。

この場合も、「とりあえず全部話してから整理してもらう」という流れが有効です。プロジェクトの目的や背景、やりたいこと、心配していることなどを自由に話して文字起こしし、次のようにAIに依頼します。

例:「次の長文は、新しく始めたいプロジェクトについて考えを話した内容です。プロジェクトメンバーに共有するために、『プロジェクトの目的』『現状の課題』『やりたいこと』『当面のアクション』の4つの項目に分けて整理してください。」

このプロンプトでは、プロジェクト共有に必要な4つの項目を指定して整理を依頼しています。AIは、話の中に散らばっている要素を拾い集め、メンバーが理解しやすい構造に組み立ててくれます。

さらに、その整理結果をもとに、ミーティング用のアジェンダまで作ってもらうこともできます。

例:「整理してくれた4つの項目をもとに、初回ミーティングの議題案を作成してください。各議題のタイトルと、話し合うべきポイントを2〜3個ずつ箇条書きにしてください。」

このプロンプトを使うことで、「説明をするためのミーティング」ではなく、「次のアクションを決めるためのミーティング」に時間を使えるようになります。

5. AIに説明を整えてもらうときのコツと注意点

説明をAIに整えてもらうときのコツは、「最初からきれいな文章を見せようとしない」ことです。多少乱暴なメモや話し言葉のままでもかまいません。その代わり、「誰に」「何を」「どのくらいの長さで」伝えたいかを、プロンプトの中でしっかり指定します。

また、AIがまとめてくれた文章は、一度声に出して読んでみるのがおすすめです。自分の声で読んでみると、「ここは少し固い」「ここは自分の言い方と違う」といった違和感に気づきやすくなり、微調整もしやすくなります。

最後に、AIが作ってくれた説明文は、「自分の言葉へと仕上げていくためのたたき台」と考えましょう。そのまま丸ごと使うのではなく、必要なところに自分の経験やエピソードを足していくことで、より伝わる説明になります。

説明が苦手だと感じている人ほど、「最初から完璧に話さなければ」と自分を追い込みがちです。しかし、生成AIを使えば、頭の中にあるものをいったん外に出し、あとから整理してもらうというやり方が取れます。話すことと整えることを分ければ、説明のハードルはぐっと下がります。

次に何かを説明する機会があったら、まずはスマートフォンに向かって自由に話してみてください。その文字起こしをAIに渡し、「この内容を相手に伝わる形に整理してください」と頼んでみましょう。説明が苦手でも、「話す担当」と「整える担当」をAIと分担することで、安心してコミュニケーションに臨めるようになっていきます。

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